臍帯血と臍帯、何が違うの?

臍帯(へその緒)と臍帯血は、いずれも赤ちゃんが出産された際に採取できるものですが、異なるものです。

臍帯は、赤ちゃんがおなかの中にいるときに母体とつながっている紐のようなもので焼く50cmくらいの長さがあり、へその緒はその一部です。赤ちゃん出産時に 臍帯は赤ちゃん側でクランプして切除され、おなかにくっついたものが「へその緒」です。臍帯は赤ちゃんに栄養や酸素を供給する役割を果たしており、赤ちゃんにとっては、まさに命綱ともいえる重要な役目を担っています。 残りの胎盤についた臍帯を胎盤につないでいる部分が切られます。

臍帯血は、臍帯と胎盤に残っている血液のことです。臍帯血には、血液のもとになる造血幹細胞がたくさん含まれています。造血幹細胞を用いた移植は、臍帯血移植といって、白血病や再生不良性貧血、免疫不全症候群などの治療法として利用されています。しかし、臍帯血は、造血幹細胞のソースとして優れていますが、免疫・再生医療等に近年盛んに用いられている間葉系幹細胞(Mesenchymal Stromal Cells;MSC)は、十分量取れないことも多い一方で、臍帯からはMSCが豊富に含まれており、容易に分離・増やすことができることがわかってきました。

※MSC(間葉系幹細胞)の働き:

間葉系細胞は、脂肪細胞、軟骨細胞、骨細胞、筋肉細胞など、それ自身がさまざまな細胞に分化するとともに、組織が障害されたり、免疫が過剰に反応して炎症が起こったりすると、組織を修復したり、炎症を抑えようとする働きをもっています。MSCからは、周りの環境によって、成長因子や免疫を調製する液性因子のようなものを分泌し、いわゆるバッファーのような機能があります。逆に何もない正常なところには、何もしないのです。

私が施設長を務める東大医科研臍帯血・臍帯バンク(IMSUT CORD;イムサットコードと呼びます)では、臍帯血と臍帯を用いて、再生医療や血液疾患及び患者数の少ない難治性疾患の治療法の開発、あるいは創薬を目指した基礎的研究を進めてきました。

これまでの研究から、臍帯に含まれるMSCには炎症を抑える作用を用いた免疫療法や組織修復を目指す再生医療に応用できることもわかり、臨床試験を経て、細胞の製品化(薬のように比較的均一な性質な細胞を作り出すこと)と資源化(バンキング)を進めています。近隣の産婦人科のご協力のもとに、臍帯血・臍帯を収集し、IMSUT CORDにて調製・凍結保管しています。

この活動は厚生労働省科研費(現AMED:国立研究開発法人日本医療研究開発機構)や文科省科研費(JST)および関連企業より、基礎研究や臨床試験等に向けた準備のサポートを受けて行われています。



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